人員整理などの理由からおこなわれる早期退職。定年まで勤めあげるよりも多くの退職金がもらえ、第二の人生も歩めることに魅力を感じる人も少なくないだろう。しかし、退職後のビジョンを見誤ると、取り返しのつかないことにもなりかねない。早期退職で人生が一転してしまった遠藤明仁さん(仮名・42歳)に話を聞いた。 大学卒業後に大手食品メーカーへ就職し、営業マンとして働き続けてきた遠藤さん。取引先で知り合った女性と結婚し、2人の子どもにも恵まれた。30代で年収も800万円近くまで上がり、それなりに豊かな生活も送れていた。とはいえ、人づきあいが苦手な遠藤さんにとって営業は苦痛の連続で、やりがいや楽しさとは無縁の毎日だったという。(取材・文:千葉こころ) 300万円を頭金に地方でマンション購入 都心から離れることに 1500万円で何とかなると思ってたのに……「デスクワークの部署を希望していたのですが、配属されたのは営業で。それでも、続けていくうちに少しずつ人と接することにも慣れたし、自分なりにはずいぶん成長させてもらったと思います。ただ、定年まで続けられるかというのは、ずっと疑問に感じていたんです」 そんな思いを抱きながら38歳を迎えたある日、社内で早期退職の募集が出た。退職金は1500万円。年齢的にも再就職はギリギリ間に合う。遠藤さんは迷うことなく名乗りを挙げた。 退職金は税金を引かれても1000万円強が手元に残った。そこで、300万円を頭金に地方でマンションを購入し、都心から離れることに。 「人生リセットの意味もありましたが、長男の小学校受験に心血を注ぐ妻を止めたかったのもあります。豊かな自然の中で、のびのび育てたかったんです」 残りの700万円ほどで生活しながら、新たな地での職探しが始まった。 苦戦を強いられた再就職 働き始めるも人間関係が原因で辞める 同時期に早期退職をした同僚の多くは、斡旋先の保険会社などですぐに働き始めていた。しかし営業職が性に合わなかった遠藤さんは、地域の求人を頼りに自力で就活することに。4か月ほどの時間を要したが、食品関連会社の事務職に就くことができた。 ところが、喜んだのも束の間、職場の人間関係が元で、3か月ほどで退職してしまったそうだ。
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